特別コラム

第3回 “興味本位なネタ本”という装いの裏に秘められた真のメッセージ ― 矛盾を憎まず笑い飛ばしてしまおう

「世界のありえな〜い100選」という本は、基本的には“ネタ本”なのだろうと思っています。面白いネタを提供する本という意味です。興味本位な本と言い換えてもよいでしょう。本の作り自体、どこからでも読み始めることができるようになっているし、キャッチーな見出しが並んでいます。

これらのネタを面白おかしく興味本位に取り上げている文面の裏に、本当は“メッセージ”のようなものを潜ませているつもりです。どういうメッセージかというと、著者紹介文の中の次の部分が暗にそれを語っています。「お堅い分野の色気のない翻訳とライティングを本業とするも、人間心理の矛盾、矛盾しているがゆえの可笑しさ、錯覚、勘違い、思い込みなどにむしろ関心があった……」

人間とは本来的に矛盾した存在なのだと思っています。その矛盾を憎んだり嫌ったりしていては、人生が辛くなるばかりです。

たとえば、親や先輩や上司の言動に矛盾があることで、理不尽な被害を被るという経験は誰にでもあるでしょう。そんなとき、われわれは矛盾している相手に怒りや憎しみを覚えます。また、自分自身の中に矛盾を抱えていて自己嫌悪に陥ることもあるでしょう。

「世界のありえな〜い100選」は10の章に分かれています。そのうち、特に第3章「思い込み」の大半の記事と第9章「理不尽」の半分くらいの記事には、どうしようもない矛盾を抱えた人物が続々と登場します。

その矛盾が“ありえな〜い”結末を招くことになります。そのありえなさ自体をただ単にネタとして楽しんでもらうというのも、本書の1つの読み方です。でも、もう少し深く掘り下げて考察するなら、その発端となった矛盾を身近な誰か(言動の矛盾から、あなたを苦しめている誰か)に重ね合わせて、日ごろの鬱憤を晴らせることもあるでしょう。

あるいは、自分自身が抱えている矛盾と重なり合う部分が少しでもあれば「明日はわが身」と半面教師にすることもできるでしょう。また、矛盾を抱えた彼らを見ていて、自分にも覚えのあることだからあまり冷たい目で見ることはできず、少しばかり同情してしまうようなケースもあるでしょう。実際、これらの話の中には、筆者自身、若い頃を振り返ると身に覚えがあるような話も含まれています。

誰か個人が矛盾を抱えているというより、社会が矛盾で満ちているがゆえに、“ありえな〜い”結末を招くこともあります。第9章「理不尽」の半分くらいは、そういう話が占めています。第5章「恋愛と結婚」にも、これに該当する話が出てきます。

その愚かしさを見てただ単に笑うのも一つ、もう少し踏み込んで自分や自分の周囲に重ね合わせるのも一つです。後者の場合は、自分が抱えている矛盾や葛藤への癒しを得ることができたり、自分が置かれている状況を嫌悪するだけではなく、笑い飛ばしてやろうという妙な勇気のようなものを得ることができたりもするでしょう。

そうそう、第6章「心と体」はいわゆるエロい話が大半を占めていますが、人間の心と体が調和を失った例を多く取り上げています。かつては貞淑な妻にして良き母だった女性が脳出血から見事に回復したものの、相手構わず誰とでも交わる超淫乱女になってしまう、という話も収録されています。夫はそれでも妻を愛し続けました。どんなに矛盾した状況に置かれても投げ出すことのなかった夫の姿は、日ごろ辛い目に遭っている人に勇気を与えてくれるかもしれません。

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『なんでも評点 世界のありえな〜い100選』公式サイト